乳がん手術後の鍼灸

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がんの患者さんに対して鍼灸ができることは対処療法です

まず最初にお伝えしておりますが、乳がんに限らず鍼灸でガンは治りません。国は「鍼灸は医療行為ではなく医療類似行為である」と定めています。

中国では鍼灸で癌治療する研究が勧められていますが、正直期待するのもなんだかな…という気持ちで情報チェックしております(一応は見ています)。

ですが手術後の各種お悩みに対しての対処療法が鍼灸には可能です。

がんは標準治療が最優先

一番にお伝えしたいことは「乳がんに限らず、がん治療は標準治療を優先してください」という事です。

ガンに効くという触れ込みで、民間療法の宣伝がインターネット、その他メディアには溢れかえっています。しかし民間療法「のみ」で治したいという考えは文字通りの致命傷です。Appleの創業者の1人であるスティーブ・ジョブズは膵がんが見つかっても標準治療をすぐ開始しませんでした。特殊な食餌療法で治そうとしていたのです。もし早く標準治療を受けていたら、56歳という若さで亡くなることはなかったのではないかと悔やまれます。

「標準治療」は名前のせいで平凡・平均・普通というイメージを持たれやすいですが、実際は「研究の結果、良いと証明されている科学的根拠に基づいた現時点で最善の治療」です。もういっその事、「最新治療」「最善治療」などに名前を変えた方が良いのでは?と勝手に思っています。

また、標準治療は1つだけとは限りません。複数の治療法が示される場合もあります。

乳がん手術の方法

乳房部分切除術

腫瘍とその周囲の正常乳腺を切除します。乳房を温存することが可能ですが、切除範囲が大きいほど乳房の変形は大きくなります。また乳房内の再発を予防するために、手術後の放射線照射が必要となります。

乳房切除術

乳頭乳輪を含め、全乳房を切除します。部分切除後の大きな変形が予想される場合や、術後の放射線照射を避けたい人が適応となります。

乳頭乳輪温存乳房切除

乳頭乳輪および皮膚を残し、乳腺のみを切除する術式です。乳房再建術を追加することで、優れた整容性が期待できますが、腫瘍が皮膚や乳頭乳輪に近い人には適しません。

腋窩リンパ節郭清(かくせい)

郭清(かくせい)とは、悪性腫瘍の摘出手術の際、腫瘍そのものだけでなく、周囲のリンパ節や転移している可能性のある疑わしい組織を徹底的に取り除くことです。

腋窩リンパ節郭清は、術前の検査で腋の下のリンパ節に転移が認められる方に行われます。腋の下には神経やリンパ管がたくさん集まっているため、腋窩リンパ節郭清を行うと、感覚が鈍くなる、腕がむくむ、腕が挙がりにくいなどの後遺症が発生する場合があります。

最近は腋窩リンパ節手術は減っている傾向にあるため重症のリンパ浮腫を起こす頻度は減ってきました。しかしセンチネルリンパ節生検を受けただけでリンパ浮腫を起こす場合もまれにあり、予防と早期治療が非常に大切です。

センチネルリンパ節生検

腋窩リンパ節郭清の手術中にセンチネルリンパ節(がん細胞が最初に転移するリンパ節のこと)のみを摘出し、転移の有無を確認します。これがセンチネルリンパ節生検です。センチネルリンパ節に転移が認められなかった場合、腋窩リンパ節郭清の省略が可能です。

腋窩リンパ節郭清を行うことで発生する後遺症を軽減するため、術前の検査でリンパ節に転移を認めない早期乳がんの方にセンチネルリンパ節生検を行います。リンパ節に転移がないと考えられている方でも、実際に手術をしてみると3割程度の方にリンパ節転移が見つかることが知られています。

また、センチネルリンパ節に転移が認められた方でも、一定の条件を満たせば腋窩リンパ節郭清の省略が可能であることが分かっています。

乳房再建術

インプラントによる再建と自家組織(筋肉や脂肪)を移植して行う再建があります。乳頭乳輪温存乳房切除との同時再建も、術後の再建も可能です。乳がん手術のうち、この再建手術が一番入院期間が長い(2〜3週間程度)です。

乳がんの手術後の困った症状

術後は以下のようなお悩みで生活の質が下がっている方が大変多いです。

  1. 肩や腕が動かしづらい
  2. 手術した側の腕または脇が浮腫む
  3. 手術した周辺に痛みや感覚の鈍さがある
  4. 眠れない、または途中で起きたり早朝に目が覚める
  5. 肩こり
  6. 頭痛
  7. 腰痛

いろはだったらこうする

上記のような術後の困った症状に対して、いろはでは総合鍼灸50~60分のメニューで以下のような施術が可能です。

  1. リンパ液と血液の循環を改善する
  2. 硬くなった筋肉をゆるめる
  3. 痛みの鎮静
  4. 関節の動かせる範囲を広げる

乳がんの術後の施術の場合、たまにご来院されて長い時間のメニューを受けられるより、お日にちを空けずに総合鍼灸50~60分を定期的に受けられるのがお勧めです。目安は週1回です。鍼灸を行う場所は手術の方法などで変わってきますが、症状が出ているところはもちろん、症状がなくとも関連しているところにも鍼灸を行います。ブラジャーは外しての施術になります。

次の内容をスタッフにお知らせくださいませ

手術の方法

手術したのは左右のどちらかはもちろん、手術の方法によっては当院での鍼灸の場所が異なってきます。

うつ伏せができるかできないか?

できない場合はうつ伏せでの施術は行いません。横向き、仰向けでの施術となります。我慢しながらの施術は良くありません。

術後の経過

病院での検診の結果や、何かお薬が処方されたり、転移についての不安などお知らせくださいませ。

日常生活や仕事について

料理していて鍋を持つのが辛い、布団の上げ下げができない、コートを脱ぐ時に時間がかかる等などの日常のお困り事についてもお知らせください。

また、「現在時短勤務にしているが数年後の管理職登用を打診されている」「将来はテレワークできる仕事に転職したい」等、将来のキャリアについてのご希望もお気軽にお知らせくださいませ。

いろはには癌手術後にキャリアチェンジまたはキャリアアップされた方が何名もいらっしゃいます。

 

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